2009年2月1日日曜日

ガザかラザか

 私は今アルジェリアにいます。アルジェリアに来るにあたって、ちょっとアルジェリアのフランス語新聞のサイトなどを見ていたのですが、そのときに気になったのが Ghaza というつづりでした。フランス語では普通「ガザ」のことを Gaza とつづっています。しかしこのアルジェリアの新聞では Ghaza というつづりを採用しているのです。
 細かいことではないか、どうせフランス人がこのつづり字を見ても Gaza と同じ発音をするだろう、と考える方もいることでしょう。しかし問題はまさにそこにあるのです。アルジェリアのフランス語新聞が、あえてフランス人とちがうつづり字を採用している理由を考えてみなければなりません。
 それはきっと Gaza というつづり字がきっとある種のアラビア語話者にとっては納得できないものだということなのでしょう。アラビア語のラテン文字への転写において、gh という子音は kh の有声音です。ライ歌手のハレッドの名前は Khaled と転写されています。こちらはロシア語ですが、サハリンはフランス語式転写では Sakhaline とつづられます。この kh は喉の奥から発音される強い「ハ行」(日本語で云うと)の音です。これの有声音が gh で転写されます。Kh の有声音は、フランス語の r に似た音になります。
 ちょっと話は変わりますが、あるベンガル人の友人が、どうしてフランス人は h の音が発音できないのだろう、r が発音できるのだから、h も発音できるはずだと云っていました。理屈から云えば、h よりも kh になるはずですが、なかなかおもしろい意見だと思いました。
 私が今いるところはチュニジアの国境に近くて、唯一ここで聞こえるフランス語のラジオはチュニジアの国際放送です。この放送局のニュースを聞くと、やはり「ガザ」は "Ghaza" と発音されています。アナウンサーの発音はまったくアクセントのないきれいなフランス語なので、奇妙に感じます。フランス人なら Gaza と発音するところを、私の耳にはどう聞いても Raza としか聞こえない音で発音するからです。
 とても外国語が上手な日本人でも、会話のなかで日本の固有名詞は日本語そのままに発音するひとの数は少なくないようです。このチュニジア国際放送のアナウンサーも、アラビア語の地名はアラビア語風に発音することにしているのでしょう。
 だからといって、「本当はガザじゃなくってラザらしいよ」なんて日本人が云いだす必要はないと思いますが。しかしグーグルで検索しても、だれもそんなことを云っていないのが結構意外です。