2008年11月8日土曜日

「キュイジニエール」に関するアンケート結果

 日本人が職業名をフランス語風のカタカナにするのはそもそも愚劣なことです。しかし愚劣なことにもさまざまなレベルがあります。何度もこのブログで繰り返していますが、本来ならば、女性の料理人は、たとえ女性であっても、職業名は男性形で名乗るのがただしいのです。しかしこの意識はフランス語圏でもだんだん薄れてきています。どのくらい薄れてきているのかよくわからないので、フランス語のブログの方でアンケートをしてみました。一箇月間のアンケート期間で答えてくれたのは22人。少ないですけれど、それでも大まかな傾向を表していると思います。
あなたの考えでは、cuisinière (キュイジニエール)という単語は職業名として用いることができますか。
  1. はい。何の問題もないと思います。14人(63%)
  2. たぶんむかしながらのフランス語ではありませんが、可能です。3人(14%)
  3. いいえ。職業名としては、cuisinier (キュイジニエ)は常に男性形でなければなりません。5人(23%)
 私はこの Blogger.com のアンケートが一人一回しか投票できないようになっているのかどうかも、だれが投票したのかも知りません。でもだいたいこんなものかなという気がします。
 もちろんこういう問題は多数決で決められるものではありません。「何の問題もない」と云うひとはそう答えるだけで、それ以上の意見をもっていません。しかしこの単語は、職業名としては常に男性形でなければならないと云うひとは、コメントを寄せてくれました。
 Cuisinière という単語は調理器具(コンロつきオーヴン)を意味する、あるいは「料理女」には軽蔑的なニュアンスがあるという根拠は、既にこのブログのなかで指摘したことですが、この cuisinière という単語は、大統領 président の奥さんが大統領夫人 présidente であるように、男性だけが職業をもっていた時代には「料理人の妻」を意味していたのだということを教えてくれたひとがいました。たとえばもともとフランス語では女性形のない職業名に、écrivaine (女性著述家)という新しい女性形をつくるフェミニズム運動はあるけれども、cuisinière を職業として用いるのはそれとはかかわりのないまちがいであるということをこのひとは主張しています。「ただしいフランス語を使いたい」ひとは、依然としてこの女性形に抵抗感を感じていることがわかります。最近はこの意識が薄れているとはいっても、cuisinière という単語は、もともと華やかなシェフよりも「給食のおばちゃん」のようなものを連想させるものだと云えます。もうひとつの愚かしい日本語のカタカナことばコンシエルジュのように、あまり品がいいとは云えない太っちょのおばさんを連想させる単語です。
 しかし現在では、フランス語圏の女性の料理人が cuisinière を名乗らないということは云えません。とはいっても、「フランス語では、女性の職業名は女性形」という初等文法の教科書に載っている生半可な知識を、ただしいフランス語の知識としてフランス語を話さない日本人に対して振り回すのは、やはり恥ずかしいことだと思います。
 まあ、こういうひとたちにとっては、「これはフランス語ではこうなの!」と日本人に吹聴するのが楽しいだけなのであって、むかしながらのただしいフランス語の知識なんて、知ったこっちゃないですか。
 (初めて通りがかったひとのためにつけくわえておきますが、C'est une bonne cuisinière は「彼女は料理がうまい」で、職業名ではない「料理する女」はまったくただしいフランス語です。ここには何の軽蔑的なニュアンスの可能性もありません。)

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