さっきテレビのNNNのニュースで「フランスでは『ゆうちょ』がブーム」というニュースをやっていました。何の話かなと思ったら「リーブレア」のこととのこと。Livret A のことでしょう。「A通帳」とでもいうんですか。フランスの金融機関には普通いわゆる通帳がありませんけれども(月ごとの支出明細が送付されます)、この「A通帳」と呼ばれるものはもともと Caisse d'épargne (ケース・デパルニュ)という金融機関の商品です。Crédit mutuel (クレディ・ミュチュエル)では同じものが Livret Bleu (リヴレ・ブルー)と呼ばれます。「青色通帳」というんですか。A通帳しか聞いたことがないんだけど、B通帳というのはヌーヴェル・カレドニー(ニュー・カレドニア)にあるようです。「A通帳」はCaisse d'épargne の商品ですが、郵便局(2005年以後金融部門は「郵便局銀行」 Banque postale の名前)でも取り扱われています。
A通帳は1818年に人道的な目的で設立された金融機関 Caisse d'épargne がつくったものですが、1870年代から郵便局の窓口でも Caisse Nationale d'Epargne の業務として取り扱われていて、これが1990年に郵便局の業務に統合されています。むかしは通帳が発行されていたのですが、もう通帳が使われない現在でもA通帳の名前が残っています。
Caisse d'épargne の訳語は「貯金金庫」「貯蓄銀行」などとなっています。手元にある1987年発行の新スタンダード仏和辞典には、「日本の郵便貯金にあたる」と書いてあります。どういう根拠のある記述なのか私にはわかりませんが、きっとそれなりの根拠はあるのでしょう。おそらく郵便局が当時 Caisse Nationale d'Epargne (国営貯金金庫)の業務を兼ねていたからということなのでしょう。しかし現在もある Caisse d'épargne と、もう存在しない Caisse Nationale d'Epargne は同じ商品を扱っていたとしても別の金融機関です。郵便業務とは縁のない Caisse d'épargne の口座 compte d'épargne (その理論上の通帳が A通帳にあたります)が日本の郵便貯金の口座にあたると云うのはむずかしいと思います。Caisse d'épargne に相当する金融機関は、ドイツ、スペイン、イタリア、ルーマニア(とカナダ)にあるということです。ヨーロッパの金融機関のグループは英語で World Savings Banks Institute と呼ばれるそうです。一方で Crédit mutuel は訳してみると「相互信金」という感じでしょうか。
正直なところ、私は日本でも郵便貯金と普通の銀行の貯金の間のちがいがよくわかりません。通帳の名前がちがうのかなあ、と思うくらいです。これに信用金庫とか農協などを加えてみても、やっぱりちがいがよくわかりません。興味がないからですね。フランスにも色々な制度がありますが、当然日本ではこれにあたると簡単に云うことはできません。私の知識がないからというよりも、そもそもヨーロッパの国と極東の国がそれぞれにつくっている制度が並行して一致するわけがないのです。
私の理解するかぎりでは、Caisse d'épargne が提供するのはどことなくイメージとしては日本の積立定期預金に似たようなものです。しかし普通預金のように管理の自由が効きます。積立金額は決まっていないし、引き出しも自由です。これに結構いい利息がつくので人気があるのです(2008年8月1日からは非課税で年利4%)。ただしこれには上限額があり、個人では15300ユーロまで(200万円くらい)、非営利団体では76500ユーロまで(1千万円くらい)とのことです。よってこれはまったくの庶民向けの商品です。通帳はひとり一冊しか所持することができません。この Caisse d'épargne という銀行の名前は「へそくり銀行」というニュアンスで考えたらわかりやすいと思います(この銀行のマスコットは少しずつ堅実に食べものを蓄えるリスです)。他の銀行もこの商品を扱いたく思って、三つの金融機関だけに独占されているのは不当だと主張していますが、今のところこの主張は認められていません。
Livret A にはもともと Caisse d'épargne の商品とのイメージがあり、この金融機関は郵便業務とは無縁です。確かに郵便局銀行もこの商品を扱っていて、その人気があるというのが事実としても、これは郵便局銀行以前に Caisse d'épargne が扱っている商品で、名前はちがうとはいっても同じものを Crédit mutuel が扱っています。これらの複数の金融機関によって扱われているただの「A通帳」という名前の Livret A のことを、しかもこちらは日本で生まれたばかりである「ゆうちょ」であると云うことには、いくら何でもむりがありすぎないでしょうか。たとえ「フランスでは『ゆうちょ』が人気」というニュースには大した宣伝効果もないとしても、これは情報操作による「ゆうちょ」の宣伝であるという印象を私はもちます。
日本の銀行もフランスにならってこんな商品をつくってほしいというのならまだ話はわかるのですが…。まあ、上限200万円の口座の商品をつくるなんて、日本の銀行家からすると「何云ってるの?」という感じでしょうけどね。
P.S. Caisse d'épargne はこの金融が不安定な時期に投機に失敗し、6億ユーロの損失を出しました。責任をとってトップが三人辞任しました。一般の顧客には影響がないと主張していますが、本当でしょうか。
来年の一月からはすべての銀行が Livret A を商品として提供できることになっているそうです。現在の不安な時期にこの商品は魅力的なので加入者数が増加しているとのことですが、来年の二月には金利を見直して、3%から3.5%程度になるだろうという話です。何にしろ「フランスでは『ゆうちょ』が人気」というニュースは実に不透明なものであるという印象をもちます。
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不思議なウィキペディア
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「レフ・ヴァウェンサ(Lech Wałęsa、1943年9月29日 -
)は、ポーランドの政治家、労働組合指導者、電気技師で、ポーランド共和国第2代大統領。日本ではレフ・ワレサとも表記される。」
ウィキペディアの「レフ・ヴァウェンサ」という記事はこういう書き出しなんだけど、何か変。「日本ではレフ・ワレサと...
4 週間前



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